
「髪、切ったの気づかなかった」と言った彼。3か月前から同じ髪型の私が冷めていった日
彼の部屋の流しで、2人分のマグカップを洗っていました。水を止めた途端、リビングからノートパソコンを閉じる音。戻った私の顔、というより髪のあたりを、彼はしばらく見ていました。
3か月遅れの一言
付き合って2年になる彼とは、休みが重なる日に彼の部屋で過ごすのが決まりになっていました。
「髪、切ったの気づかなかった」
彼はそう言いました。
背中まであった髪を、あごのラインで切りそろえたのは3か月前のことです。美容院の帰りにそのまま彼の部屋へ寄った日のことも、よく覚えていました。職場の同僚には、似合うと言ってもらえた髪型でした。
「切ったの、3か月前だよ」
笑って返したつもりでしたが、声は思ったより平らでした。
あの日も、彼は画面を見ていた
3か月前のあの日も、彼はノートパソコンに向かっていました。仕事の資料が終わらないと言って、彼は画面から顔を上げませんでした。部屋に入った私が髪に手をやって見せても、彼はおかえりと返しただけ。忙しい時期なのだと、自分に言い聞かせてその日は帰りました。
それからも、似たことは続きました。新しく買ったワンピースも、色を変えたネイルも、話題にのぼったことはありません。話しかけても、返ってくる相づちは少しずつ短くなっていくように感じていました。
今日だって、私が台所から戻るまで彼が見ていたのは、あの画面です。