
「うるせえな」レストランで子ども連れに舌打ちした男性→睨んだ私が、隣の席の女の子に差し出したもの
言い返したい言葉はいくつも浮かびましたが、口論になれば一番困るのは隣の親子。そう思った私がテーブルの間から差し出したものに、泣き続けていた女の子の声がふっと途切れました。
昼どきのレストランで泣き続ける女の子
仕事の合間に、駅ビルのレストランに1人で入ったときのことです。窓際に2人掛けのテーブルが狭い間隔で並び、私の隣には3歳くらいの女の子と母親、そのさらに隣にはスーツ姿の男性が座っていました。
女の子が泣き出したのは、料理が運ばれてきてすぐでした。
「おうちかえる」
背中をさすっても、お子さまプレートの旗を見せても、泣き声はやみません。母親は小声で謝りながら、女の子の顔を自分の肩に押し当てるようにして抱いていました。
2つ隣の席から聞こえた舌打ち
男性が大きく舌打ちをしたのは、泣き声が少し落ち着きかけたときでした。
「うるせえな」
「すみません」
母親が頭を下げると、女の子はまた大声で泣き出しました。
気づけば、私は男性の横顔を睨んでいました。視線に気づいた男性はこちらを向き、眉を寄せてから皿に目を戻しました。言い返したい言葉はいくつも浮かびました。けれど、ここで口論になれば一番困るのはあの親子でした。
椅子の背に手を伸ばすと、持ち手のうさぎが揺れていました。金具を外し、テーブルの間から身を乗り出しました。
「ほら、うさぎさんだよ」
女の子の泣き声が、ふっと途切れました。濡れた目がマスコットをとらえ、小さな口が何かを言いかけるように動いたのです。