
封を切らない箱を積んだまま、俺は次に出ていく話をしていません
彼女を待たせていた数分に何をしていたのか、俺は一度も話していませんでした。押し入れの戸を引いたのは、説明の代わりにできることがそれしかなかったからです。
俺の暮らしは、押し入れの中に収まっていた
彼女と付き合って1年になります。仕事の都合で数年ごとに住む場所が変わり、この部屋は2年目でした。
畳に出しているのは寝具と鍋が1つだけです。食器も座卓も座布団も、押し入れの下の段にしまってあります。彼女から着いたと連絡が来ると、俺は「あと少しだけ待って」と返し、そこから2人分を取り出しました。待ってもらう数分は、そのための時間です。なぜ普段は出さないのかを、俺は一度も話していませんでした。
半分だけ開けた戸の向こうで、俺は言葉を選び間違えた
その日の呼び鈴は、連絡より先でした。取り出せていたのは座布団が1枚。歯ブラシ立ても1本のままです。
「先に出しておきたかっただけなんだ」
出しておきたかった理由まで続けて言えばよかったのに、俺はそこで口をとじました。彼女の目が畳の上を行き来しているのは分かりました。
「本当に1人で住んでるの?」
責められたとは思いませんでした。2年住んだ部屋について、俺が彼女に一度も説明していなかっただけです。