
私の日焼け止めを使い切った彼、夕食で差し出した紙袋と2枚の券
洗面台に置いたはずの日焼け止めが、中身のへこんだ姿でポーチに戻されていました。夕食の席で彼が差し出したのは、小さな紙袋と乗船券2枚でした。
空になったチューブ
彼との旅行の初日でした。肌の弱い私は使える日焼け止めが限られていて、この1本も何度も試して選び、旅行のために新しく買ったものです。キャップを開けて確かめてから、私はベッドの彼に聞きました。「これ、使った?」。彼は目も上げずに答えました。「俺も焼けたくないし」。謝る様子はありませんでした。
坂の上の薬局で
ホテルの売店に並んでいたのは、肌の強い人向けのものばかりでした。フロントで教わった坂の上の薬局まで歩くと、棚の端にいつもの1本が残っていました。会計で店員さんが言いました。「ちょうど最後の1本ですね」。助かった、という気持ちの横で、ここまで歩かせた張本人は出がけにベッドでスマホをいじっていたのだと思うと、坂道の歩幅が自然と大きくなりました。買ったばかりの日焼け止めをポーチの奥にしまい、私はビーチへ向かいました。