
「ママに聞いてるの」と繰り返す娘に理由を確かめてみると、夫の顔つきが変わりました
娘の口からこぼれたのは、私も知らなかった、小さな記憶でした。夫が覚えていない出来事を、娘は言葉にしました。

娘の口からこぼれたのは、私も知らなかった、小さな記憶でした。夫が覚えていない出来事を、娘は言葉にしました。
くつしたはどこ、明日のじゅんびはどうすればいい。娘は困りごとがあるたび、家族のグループチャットに短いメッセージを送ってきました。夫が先に返信しても、娘は「ママにきいてるの」とだけ返し、私の返事を待つのがほとんどでした。夕食の後片付けをしながら、夫が茶碗を重ねる手つきが、心なしか乱暴になっていく日もありました。
娘が部屋に戻ったあと、夫が食卓に残ったまま「なんで俺には聞いてくれないんだろうな」とこぼしました。冗談めかした声でしたが、目線は茶碗の底に向いたままでした。私は、いつか娘に聞いてみようと思いながら、その日は相槌だけを返しました。