
私が寝込む日に限って帰りが遅い「無理しないで」が口癖の夫
繰り返される夫の「遅くなる」に、私はその日初めて「もういいよ」と返しました。既読がついた画面を閉じかけたとき、聞こえてきたのは普段よりずっと早い玄関の鍵の音でした。
ひとりの部屋で待つ既読
付き合っていた頃から、夫は看病が得意な人ではありませんでした。風邪で寝込んでいても、そばにいてくれることも、おかゆを温めてくれることもありません。それでも出勤前に「無理しないで」と声をかけてくれることが、当時の私には10分でした。
結婚して2年が過ぎた頃、あることに気づきます。「今日、ちょっとしんどいかも」と伝えた日に限って、夫の帰りが遅いのです。
「今日少し遅くなる」
メッセージはいつもその1通で、「わかった」と返すと、それきり画面は暗いままでした。
偶然では済まない回数
私は体が弱く、季節の変わり目には決まって体調を崩し、それは2か月か3か月に1度のことでした。その度に同じメッセージが届きます。偶然だろうと流していたのが、3度、4度と重なるうちに流せなくなりました。
リビングのソファにブランケットを引いて横になりながら、夫に「また遅いの」と打ちました。返ってきたのは「ごめん、もう少しかかる」の一言。スマホを布団ごと抱えたまま天井の照明の輪を見上げていると、体のだるさより、この部屋に自分しかいない感覚のほうが重く感じました。