
探し続けた、彼女のマグカップ。「ちょっと用事」と濁し続けた半年間
テンションが上がったまま送ったボイスメッセージが、よりにもよって彼女のスマホに届いてしまったのです。隠し続けた半年が、ここで表に出てしまいました。
あの取っ手が欠けた音
俺の手元が滑って、彼女のお気に入りのマグカップを欠けさせた音は、半年経った今もよく覚えています。彼女は「大丈夫だよ」と笑ってくれましたが、その日以来、新しいカップを買い足そうとはしませんでした。俺のせいで、彼女の小さな楽しみがひとつ消えてしまった。同じ品を見つけて返すまで、この件を終わらせたくありませんでした。
製造終了の品を、姉に頼って探した半年
同じ品はどの店でも首を横に振られ、製造をやめた品らしいとわかりました。陶器に詳しい姉に相談すると、業界の知り合いに当たってみると言ってくれました。
それから半年、姉から教えてもらった店を一軒ずつ回り、空振りが続くたびに姉と次の店を相談する日々が続きました。彼女に出かける理由を聞かれるたび、「ちょっと用事」としか答えず、スマホが震えるたびに彼女へ画面を向けずに確認する癖までついていました。隠しごとが長引いた分、彼女の中で別のものが膨らんでいたことに、その頃の俺は気づいていませんでした。