
「明日、午後から会いに行ける」。日付の変わり目に間に合わなかった俺が、その約束のために会社に残った夜
会社を出るころには、スマホの電源が落ちていました。電車を降りた俺は、ホームの端で駅の時計だけを見ていました。
既読をつけたまま、返せませんでした
彼女とは付き合って3年。お互いの勤め先が離れていて、平日に会うのは難しく、会えるのはほとんど週末だけです。連絡は毎日チャットで、付き合ってから、お互い誕生日には日付が変わった瞬間におめでとうを送りあっていました。今年の誕生日は平日でした。おめでとうの文だけ送って、次の週末まで会わないのを、今年はやめると決めていたのです。本来なら明日に回す予定だった資料を、半休を取るために今日のうちに終わらせる必要がありました。申請を出して席に戻ったとき、彼女からの「今日は早いの?」が一番上にありました。開いて既読をつけたところで、上司に呼ばれました。残業とだけ返すのも気が引けて、返事は仕事を仕上げてからにするつもりでした。
駅の時計が、日付を変えるのを見ていました
資料を送り終えて会社を出たときには、電池の残りを示す線が消えていました。電車を降りると、駅の時計は日付を変える直前でした。俺はホームの端で、彼女が誕生日を迎えたことを知りました。電源の落ちたスマホを持ったまま、彼女が今頃チャットを開いているのだろうかと考えました。去年まで、この時刻に遅れたことは一度もありません。既読だけ残したメッセージのことを考えると心が痛みました。