
お礼の文面をなぞるだけだった私が、文面集を閉じた理由
お客さまが席を立つと、私はいつも同じお礼の文面を開いていました。
なぞっていれば、失敗しない
美容師になって2年目、担当としてお客さまを任せてもらえるようになった頃のことです。
お礼のメッセージについては、先輩たちが使っている文面を共有してもらっていました。
「本日はご来店いただきありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしております。」
施術が終わるたび、私はこの文章の最後に自分の名前を添えて送っていました。
私は昔から、自分の言葉を相手に送るのが苦手でした。共有された文面は、そんな私にとって便利な逃げ道でした。
話が弾んだ日ほど、書けなくなりました
映画の話で盛り上がったお客さまがいました。
最近見た作品の話から、好きな場面や結末の話まで続き、私もいつもよりたくさん話しました。
お客さまが帰ったあと、映画について少し書こうと思いました。
「あの作品、ぜひ見てください」
そこまで打って、消しました。結局、いつものお礼を送りました。
翌日、そのお客さまから、
「おすすめしてもらった映画、見ました」
と届きました。
本当は感想を聞きたかったです。それでも私はまた迷い、最後には、
「またのご来店をお待ちしております。」
と返しました。
テンプレートなら、そっけないと思われても「お店の文面だから」と考えられます。自分の言葉を書いて反応が悪ければ、それは私自身への反応になります。