
「数千円ぐらいケチるな」元カノの傘を返さなかった俺の言い分
家を出るとき手に取ったのは、もう自分のもののように使い慣れた、元カノの紺色の長傘でした。
使えそうなものは置いといた
別れることになったとき、家にあった元カノの荷物を段ボールに詰めました。服も、本も、コップも、ひとつずつ仕分けました。途中で、玄関の傘立てから紺色の長傘が目に入りました。男が持っても違和感のないシンプルなデザインでした。置いておけば自分も雨の日に使えると思ったのです。大きいし送料がかかる。手間もかかる。それくらいなら、と俺は傘を抜いておきました。
雨の日の人混みで
別れて1か月が過ぎた雨の日、用事で駅前に立ち寄りました。遠くで元カノが歩いているのを見かけました。俺は傘を深くさし直して、人混みに紛れました。しかし、しばらくしてメッセージが入りました。「今日、駅前にいたよね」「あれ、私の傘だよね?」画面を伏せたい気分を堪えながら、俺は短く返しました。「使えそうだったから置いといた」と。