
「稼いでる男の余裕だよ」と笑っていた僕→彼女に貯金額を聞かれて顔が引きつった
財布の中身を見せたことも、口座の残高を話したこともありませんでした。彼女の前では、いつだって頼れる存在でいたかったのです。けれど、たったひとつの質問が、その思い込みを終わらせました。
ずっと演じていた「余裕のある男」
彼女とのデートで、財布を出すのはいつも僕の役目でした。伝票が来れば、見もせずにカードを置く。彼女が「半分出すよ」と言っても、僕は笑って首を振りました。そうしている自分が、好きだったのです。
本当は、給料のほとんどを使い切る暮らしでした。アクセサリーもホテルのディナーも、貯金からではなく、その場の見栄から生まれたものです。彼女が値段を気にするたび、僕は決まってこう言いました。「稼いでる男の余裕だよ」。余裕なんて、どこにもなかったのに。
彼女のひとこと
半年がたったころ、彼女が将来の話を始めました。結婚や暮らしのことを、楽しそうに話す彼女。そんな流れで、彼女はこう尋ねました。「貯金って、どれくらいあるの?」。
彼女に悪意がないのは、表情を見ればわかりました。それでも僕は、いつものように笑ってみせることができませんでした。グラスをテーブルに戻し、視線を手元に落とすのが精一杯です。この質問にだけは、どうしても言葉が出てこなかったのです。