
「お忙しい中、ご返信ありがとうございます」敬語を崩さないSNSの彼、挨拶抜きで送った質問への長い沈黙
画面に並んだ彼の文章は、国語の教科書みたいに、きちんと句点で終わっていました。迷った末、私は短い質問を1つだけ送りました。すぐに既読がついたのに、返信は届かないまま。画面の向こうにいる彼が、初めてわからなくなりました。
崩れない敬語
写真好きが集まるSNSで彼と知り合ったのは、数カ月前のことでした。私の投稿に寄せてくれる感想が丁寧で、やりとりはそのままメッセージ機能に移りました。ただ、彼の文面はいつも「お忙しい中、ご返信ありがとうございます」で始まりました。誤字はなく、絵文字もありません。共通の趣味の話題は尽きないのに、敬語だけは何往復しても崩れませんでした。年齢も趣味も近いはずなのに、文面の上ではずっと初対面のままでした。
増えていくお礼の言葉
距離を縮めたくて、私はわざと軽い言い回しで返してみました。絵文字を足して、文末をゆるめて。それでも返ってくる文面は変わりませんでした。むしろ行数が増えて、お礼の言葉が1つ多くなっていました。壁を作ろうとしているのかもしれない。そう思い始めてから、返信の下書きを送らないまま閉じる日が増えました。共通の知人がいるわけでもなく、彼の丁寧さの理由を確かめる方法は、本人に聞くことだけでした。