
買い物リストから彼女の好物を消し続けた俺が、最後に書き足したもの
彼女の好物がリストから消えていたのには、言い出せない理由がありました。それが彼女から大切な支えを奪っていたと、俺が気づいたのは、ずいぶん後になってからです。
消していたのは、俺だった
同棲を始めて一年が経ち、二人の荷物も増えて、そろそろ広い部屋に移ろうかと話していました。引っ越しには思っていた以上のお金がかかります。少しでも貯めたくて、俺はまず自分の支出から削ることにしました。毎日の昼はコンビニから手作りの弁当に切り替え、週末に通っていた居酒屋にも行かなくなりました。それでも貯まる速度は思ったほど上がりません。日用品は削れない。
だったら、なくても困らないものから減らすしかない。彼女がリストに書き足すプリンや高めの入浴剤を、俺は買い物のたびにそっと消していきました。彼女のためにもなる、二人の将来のためだと、そのときの俺は信じていました。
本当のことを、言えなかった
彼女のプリンを消すとき、指がほんの一瞬止まることが何度かありました。それでも自分は弁当も居酒屋も我慢しているのだから、と振り切って消していました。
そんなあるとき、彼女がリストの画面を見せて聞いてきました。「私の好きなもの、いつも消えてるよね」。貯金のことを正直に言えばよかったのに、自分だけ理屈で納得していた後ろめたさが先に立って、俺は「それは今はいいかなって」と当たり障りのない返事でごまかしました。彼女の顔が曇ったのが分かっても、俺はそこで話を終わらせてしまいました。そのあと、彼女はリビングに戻って黙ってスマホをいじっていました。守っているつもりで、俺は一番近くにいる人を一人にしていたのです。