
彼女のお祝いだけ最後まで取っておいた僕が、薄くなる笑顔で気づいた失敗
彼女が先を譲ってくれた言葉に、僕は甘えてしまいました。用意したものばかりを信じて、いちばん近くにいる人の表情を、僕は最後まで見落としていたのです。
いちばんの報告を、雑に流したくなかった
その日の集まりは、僕が彼女を連れていったものでした。彼女は長く目指していた資格に合格したばかりで、僕はそれを心から誇りに思っていました。だからこそ、順番に回ってくる近況報告の中に混ぜて、軽い相づちで流されてしまうのが惜しく思えました。彼女の番が来たとき、僕は「それはあとにしよう」と口をはさみました。遅れて来る彼女の親友がそろってから、いちばん良い形で伝えたかったのです。台所には、店で受け取ってきたケーキを隠してありました。
大丈夫、と言った彼女を信じてしまった
彼女は「私は大丈夫、先にどうぞ」と笑ってくれました。その言葉に甘えて、僕は予定どおり報告を先へ送り続けました。けれど報告がもう一巡するころには、彼女の口数が減っていました。料理に伸ばしかけた手を引っ込める仕草が増え、相づちの声も小さくなっていく。あとで全部わかるから、と僕は自分に言い聞かせました。彼女の表情よりも、自分で組み立てた段取りのほうを信じてしまったのです。