
妻のベランダ菜園を「コスパが悪い」と切り捨てた俺。3歳の娘がトマトを頬張った日の話
合理性ばかり気にして、妻のベランダ菜園を「コスパが悪い」と切り捨てていた俺。3歳の娘が頬張ったトマトひとつで、自分の浅さに気づくことになります。
合理的な俺と、不合理な菜園
ある日、妻がプランターと苗を抱えて帰ってきました。レシートに目を落としながら、俺は思わず言ってしまったのです。
「家庭菜園なんて買ったほうが安い」
さらに「コスパが悪い」「ベランダの場所も無駄になるし」と、つい続けていきました。スーパーに行けば、トマトもきゅうりも100円台で買えます。育てる時間、水代、肥料代、毎朝の手間。仕事で数字を扱う身としては、明らかに割に合わないと判断したのです。
水やりを忘れて萎れた葉を見つけるたび、「ほら、続かないでしょ」と冗談まじりに笑いました。妻が小さく口を結ぶ表情を、俺は本気で気にしていませんでした。
娘がベランダに走るようになった
不思議だったのは、娘が毎朝ベランダに走るようになったことです。「葉っぱ大きくなった」「お花咲いた」と妻に報告し、雨の日には窓越しにじっと見つめている。
保育園から帰るたびにプランターを覗き、「トマトさんまだ赤くないね」と話しかける娘の姿を、俺はソファでテレビを見ながら横目で眺めていました。
野菜嫌いの娘が、口に入れもしない野菜になぜ夢中になるのか、俺には理解できなかったのです。ただ、妻と娘が並んでじょうろを傾ける朝の景色だけは、なぜか目が離せない時間でした。