
「彼に『好き』って気持ちを伝える」
■もし彼が、戻って来たら
上の「見送る」の例では、実際のところ、彼が見えなくなった瞬間にお見送りをやめようと、そのまま構わず勝手にお見送りを続けようと、彼から見れば、何も変わりません。
こう考えれば、「見えなくなった後にまで手を振ってても意味ないし、疲れるだけだからもう帰ろー」とする方が省エネというか、賢いやり方な気もしますよね。
たいていの場合、もっと言えば、99%くらいのケースでは、そのとおりになるんだと思います。つまり、お見送りを続けても、無駄に終わるんだと思います。
ですが、どうでしょう。
もしも彼が、ふとした拍子に「ひょっとして、まだ見送ってくれてたりするのかな?」なんて思うことがあって、改札を抜けて階段を降りている途中で、来た道を戻って彼女の様子を確認しに来たりするということがもしあったら。何か言い忘れたことがあって、戻ってきたりすれば。
この彼の突拍子もない思いつきは、もともとかなり期待薄で、当の本人も「まさかいないだろうとは思うけど」的な感覚なんだと思います。
だから、彼女が省エネしていて、結局もう帰ろうとしている後ろ姿が見えるだけだったとしても彼は「やっぱりね」と思うだけで、別に落ち込んだりということはないんだろうと思います。
だけど、もし省エネせずに、手を振り続けていたら。
そのときに彼の感激は、きっとすさまじいものがあると思います。
「うわマジか……」と驚きつつ、「まさか、今日だけじゃなくていつもそうやってたの?」とか「てか、俺がこうやってたまたま戻って来なかったら、どうするつもりだったの?」と、彼女の底知れない愛情の深さに、とてつもない嬉しさを覚えるはずです。きっと、とてつもない満面の笑みで改札を突き破り、彼女の元に駆け寄ってハグとかキスとかしちゃうんだと思います。
■「見えない部分」はあなどれない
ここまでのお話は、あくまでほんの一例です。
だけど他にも、こういう場面ってあると思うんです。
彼がはだけて寝てるから、毛布をそっとかけてあげる。
彼にはあえて言わずに、こっそり服のゴミをとってあげる。
彼のいないところでも、彼のことを褒める。
どれも、きっと彼はそれに気が付かない。だけど、もしも一瞬目が覚めたら、服に手が触れた感覚で気付いたら、友人づたえで耳にしたら……。
「見えない部分」で表す気持ちは、「見えないはず」だからこそ、損得勘定がなくて本当の、心からの愛情表現に感じるのかもしれません。
そして、そんな素敵な気持ちの伝え方をしてくれるその子に、彼はきっと「こんな子、他にいない……」と掛け替えのなさを感じてくれると思うのではないでしょうか。
「見えてる部分」で伝えるのでも、99%は問題ない。でもそのたった1%を粗末にしないで、余すことなく気持ちを伝えきる姿勢・態度。
これが当たったときの彼の感動の大きさを思えば、「どうせ見えないし」と省エネばかりしていることも、逆にもったいないと感じてきませんか?(遣水あかり/ライター)
(橋本佳奈/モデル)
(島崎雄史/カメラマン)
(真己野ナナ/ヘアメイク)
(辻野祐馬/ディレクション)