
「わかった」と声で返した僕が、用件のあとに毎回つけ足していたもの
妻は用件にだけ答え、後半につけ足した言葉には触れませんでした。それでも僕は後半を削らないまま2年を過ごしていました。
用件だけのメッセージは、いつも送る前に消えていきました
妻に文字で連絡しようとすると、画面に残るのは用件だけです。帰りが遅くなること、ごはんがいらないこと。それを並べた言葉を読み返すと、そこから先を打ち足せなくなります。何か添えようとして書いては消すのを繰り返し、結局は送信を押さないまま画面を閉じていました。声なら、途中で考え直す隙がありません。用件の勢いのまま、最後まで言い切れます。
妻が仕事に追われていた時期に届いた一言が、始まりでした
音声に切り替えたのは2年前です。妻から「長い文章、今は読む余裕がなくて」と届いたことがあり、読ませずに済む形にしたつもりでした。ただ、理由はそれだけではありません。声にすれば、用件の後ろに続けて「そっちも、無理しないで」と置いても、書き直す時間が生まれません。文字の欄では身構えてしまう言い方が、勢いのままなら残せました。話し終えたあとに残る間は、そこへ入る前に息を継いでいる時間です。