
木製の調味料入れを動かし続けた私が、掃除のふりをやめた夜
「私の物、勝手に動かさないで」強い声で言われてようやく、私は火のそばに物を置けない理由を話し始めました。半年間の掃除のふりの、これが終わりでした。
入れ物に伸びる手
半年前から、同い年の彼女とシェアハウスの一室ずつを借りて暮らしています。彼女がコンロの横に置く木製の塩と胡椒の入れ物を目にするたび、私の頭には実家の台所がよみがえります。
高校生の頃、コンロの横に置かれた紙袋に火が移りかけたのを、私はすぐそばで見ていました。あの時の焦げたにおいが残っていて、火の近くに物があると、確かめるまで落ち着かなくなったのです。
掃除のふり
最初のうちは、掃除の流れを装って入れ物を棚へ寄せていました。理由を話せば済むことだと、頭では分かっていました。それでも、火が怖いから置き場所を変えてほしいと頼んで、神経質な人だと引かれるのが怖かったのです。
棚に「ここが定位置です」というメモが貼られて、気づかれていると分かりました。それでも私は打ち明ける代わりに、メモの真下から入れ物を移し続けました。頼めない弱さの分だけ、手を動かしていたのだと思います。