
彼女に位置情報を見られていると知りながら、俺が花屋の前で5分立ち止まり続けた理由
彼女から届いた一行に、俺はすぐには返事ができませんでした。位置情報の共有を止めれば済む話だと分かっていながら、そうしなかったのには理由がありました。
来月のために通った店
付き合って3年になる来月、彼女に結婚を申し込むつもりでした。指輪はもう引き出しの奥にしまってあり、足りないのは花束だけでした。
付き合い始めたころ、彼女が別の街の花屋の前で「この白いの、好きなんだよね」と言ったことがありました。ラナンキュラスという名前だと、あとでこの店の店主に教わりました。
ただ、この花は入荷の日が決まっておらず、入っても数本ずつだそうでした。「毎日見に来てくれたら、いいのが入った日に取っておくよ」という店主の言葉に甘えて、仕事帰りに寄るようになりました。その日に並んだ分のつぼみの数を確かめ、色の具合を相談する。それだけで、毎回5分ほどかかっていました。
打ちかけて消した返事
ある日、彼女から「最近帰り遅くない?」と届きました。
「花屋に寄ってる」と打ちかけて、消しました。理由を聞かれたら、うまくごまかせる自信がなかったからです。結局送ったのは「そう?いつも通りだよ」でした。
位置情報の共有を止めれば、5分の寄り道は見えなくなります。設定画面を開いたこともありました。けれど急にピンが消えたら、彼女はもっと心配するかもしれない。それなら見られていてもいいと、画面を閉じました。