
妻の弁当を残すのがつらくて、仕事の帰り道にとった行動
感謝していないわけがありませんでした。ただ、あの人が心を込めて作ったものを残して帰る自分の顔だけは、どうしても見せたくなかったのです。
食べきれなかったお弁当
妻は結婚してからずっと、俺にお弁当を持たせてくれます。仕事が立て込む時期が重なって、その半分も食べきれない日が続いていました。手をつけられなかったおかずを、食卓で妻と分け合うとき、俺はいつも後ろめたさを抱えていました。
あの人が手間をかけて作ったものを、俺が残している。その事実だけが、口の中の卵焼きの味を遠ざけました。
「いらないなら」と聞かれて
食卓で向かい合ったある日、妻が聞いてきました。
「いらないなら、言ってね」
責める調子ではなかったのに、その一言は思っていたより深く刺さりました。俺は箸を置いて、焦って顔を上げます。
「いらないなんて、そんなことないよ」うまく言えないまま、それでも伝えたくて続けました。
「本当に感謝してるよ。ただ、仕事が立て込んでて、食べる時間がなかっただけで」
妻の作ったお弁当が、俺は好きなのです。