
好きな店を勝手に変えた僕が隠していた、あのお店で感じていた居心地の悪さ
値段を見て財布のことが頭をよぎり、僕は料理を楽しむどころではありませんでした。彼女の好きなものを守るより、自分の見栄を守ることを選んでしまったのだと思います。
前に二人で行ったとき
そのお店に二人で行ったのは、少し前のことでした。彼女はお店の人と親しげに話し、メニューを見ながら本当に嬉しそうにしていました。
けれど僕は、その輪の中にうまく入れませんでした。並んでいる料理の値段を見て、財布のことが頭をよぎります。慣れない場所で、どう振る舞えばいいのかもわかりません。彼女が輝いて見えるほど、自分だけが場違いな気がしてならなかったのです。
言えなかった本音
だから次の約束のとき、僕はお店をこっそり別のところに変えました。彼女から連絡が来て、僕はとっさにこう答えてしまいます。
「あの店、なんか落ち着かないんだよね」
そして「予約、別のところにしておいたから」と。彼女に「どうして勝手に変えたの」と言われても、本当の理由は口にできませんでした。あの店で僕が小さくなっていたなんて、情けなくて言えなかったのです。お店のせいにするほうが、ずっと楽でした。