
孫ほどの若い子に席を譲ってもらった朝、私はその子の青ざめた横顔を忘れられなかった
朝の電車で席に座っていた若い女性に、私はつい嫌味を言ってしまいました。すぐに立ち上がってくれた彼女ですが、ドア付近で揺れる青ざめた横顔を見て、私は自分の言葉を恥じることになったのです。
不機嫌のまま家を出た朝
その朝、夫と些細なことで口論になりました。テレビのチャンネルか、味噌汁の味付けか、もう内容も覚えていません。とにかくお互いが「またか」という顔をして、私は買い物に出かけるためにそのまま家を出てしまったのです。ホームに立ったとき、すでに気持ちが沈んでいました。電車に乗り込んでも、座席は埋まっています。50代の頃なら気にもしなかった立ち姿勢が、最近は腰にこたえるようになりました。
つい口から出てしまった一言
目の前の優先席ではない座席に、若い女性が目を閉じて座っていました。ぐっすり寝ているわけではなさそうなのに、目を開ける気配がありません。普段の私なら、そのまま立っていたと思います。けれど、その朝の私は違いました。口から、ぽろっと出てしまったのです。
「最近の若い子は席も譲れないのね」 言ってしまってから、しまったと思いました。彼女ははっと目を開けて、すぐに立ち上がってくれました。 「すみません、気づかなくて」 丁寧に頭を下げ、席を空けてくれたのです。私は無言のまま、その席に座りました。お礼を言うのもばつが悪く、ただうつむいていました。