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    杖の女性が目の前に立っても優先席で目を開けなかった俺→「説明する義務はない」と思った理由

    2026-09-21
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    杖の女性が目の前に立っても優先席で目を開けなかった俺→「説明する義務はない」と思った理由

    事情を言えば済むことは分かっていました。それでも、なぜ俺が説明する側なんだと思ったまま、杖の音を聞いていました。

    靴紐をほどいて座った優先席

    右の足首はその場で腫れ始め、駅に着く頃には靴の紐を結んでいられなくなりました。紐をほどき、足を引きずって乗り込んだ車両で、空いていたのは扉の脇の優先席だけでした。

    座って、鞄を膝に乗せ、右足を前に投げ出して、目を閉じました。立っている人と目が合えば、譲る譲らないの話になる。それを考えるのが嫌で、先に目を閉じたのです。

    なぜ俺が説明する側なんだ

    2駅目で、杖が床を打つ音が聞こえてきました。音は通路を進み、俺の目の前で止まりました。膝に力を入れかけて、やめました。片足で立てば、腫れた足首を見せて、事情を口にすることになる。「足をひねりました」と言えば済むことは分かっていました。

    それでも、座っている理由を知らない人に説明しないといけないのか、と思いました。俺は立てない。だから座っている。優先席は、杖の人だけの席ではないはずだ。それで十分だろう、と。鞄の持ち手を握ったまま、目を開けませんでした。

    「お休みみたいですから、こちらは無理ですね」

    女性の声でした。俺に聞こえるように言ったのが分かりました。腹が立ちました。勝手に決めつけて、勝手に嫌味を言う。だったらなおさら説明したくないと思いました。ここで目を開けて事情を言えば、その人の言うとおりにしたことになる。そう思って、まぶたに力を入れました。

    杖の音は3駅ぶん俺の前で鳴り続けて、そのまま扉のほうへ遠ざかっていきました。仕方ない、と思いました。後悔したかと聞かれれば、していません。ただ、そのあと終点まで、目を開けられませんでした。

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