
「俺だって疲れてるんだよ」と言った休日、ヘッドセットを外した理由
コントローラーをテーブルに置いたとき、台所で流れている水の音と、息子の部屋から転がるクレヨンの音がいっぺんに戻ってきました。
通知音が止まる場所
会社でシステムの保守運用を担当して3年になります。トラブルが起きれば携帯が鳴り、対応が終わるまで席を立てません。この半年は不具合の連鎖が続いていて、布団に入っても通知音が頭のどこかで鳴り続けている気がします。休みの日にヘッドセットをつけてゲームを起動すると、ようやくその音が遠のきます。妻や息子の声まで届かなくなることはわかっていました。でも俺には、日常の音が何も聞こえない時間が必要でした。
「うん、上手だね」
その日も、ソファでコントローラーを握っていました。息子が「お父さん、見て」と目の前に立ちました。ヘッドセットの片耳を浮かせて「うん、上手だね」と答えましたが、絵を見る余裕がなく、目は画面に残ったままでした。妻が「ちゃんと見てあげてよ」と言いました。「見たよ」と返しましたが、見ていないことは自分が一番わかっています。「画面を見たまま何がわかるの」。妻の声を受けて、俺はまた片耳を塞ぎ直しました。息子がソファの横に絵を置いて部屋に戻っていたことに気づいたのは、少し後でした。