
引き止めてほしいと言えなかった私が、本に挟んだ紙にだけ書けた頼みごと
口に出せば断られるかもしれないと思って、私は最後まで頼めませんでした。代わりに本に挟んだ紙を彼が見つけたかどうかは、まだ分かっていません。
決まってからしか言えませんでした
付き合って3年、私たちの職場はどちらも同じ町の中にありました。昇給するためには別の街に行って働かなければなりません。異動の希望を出すかどうか、何度も切り出そうとしました。ただ、相談の形で持ちかければ、私は彼が引き止めてくれるのを待つことになります。待ったうえで何も言われなかったときの自分は、想像がつきました。だから全部決まってから「来月から、向こうの店に移ることになった」と伝えたのです。彼が返したのは「そっか。決まったんだ」でした。思っていた通りの返事で、私はうなずくのが精一杯でした。
置いていくと言った本
荷造りの日、彼は黙って本を箱に詰めてくれました。その中に、3年前に借りたまま返していない本があります。私は手を伸ばして「この本、返すよ」と言いました。返ってきたのは「持っていけば」でした。本当は、その本に挟んだ紙を見つけてほしかったのです。