
「あんたは要領がいいよね」姉の口癖に、私が初めて言い返した日
「それ、褒めてるの?」と聞き返した私に、姉は迷いなく答えました。3日後に届いた1通で、私はあの口癖の意味を考え直すことになります。
何度目かの口癖
「あんたは要領がいいよね」母が味噌汁を一口飲んで「この味、お店みたい」と褒めた直後でした。声の方を見ると、姉は炊飯器の横に立ったまま、私を見ていました。実家に集まるたび、姉はこの言葉を口にします。料理を褒められたとき、仕事の話を聞かれたとき、締めくくりはいつも同じでした。これまでの私は、曖昧に笑って流してきました。けれど内心では、誰かに褒められるたびにあの一言をかぶせられて、中身ではなく立ち回りで得をしてきた、と言われた気になっていました。
初めて聞き返した
この日の献立は、前日のうちに一度作って味を確かめたものでした。そのことを姉は知りません。だからこそ、母の言葉に重ねられた一言が、いつもより重く残りました。「それ、褒めてるの?」聞き返した私に、姉は一拍おいてから答えました。「褒めてるに決まってるでしょ」迷いのない言い方が、かえって引っかかりました。「私だって、見えないところでどれだけ準備してるか知らないでしょ」そう言って、私は先に居間へ戻りました。台所には、換気扇の音だけが残っていました。