
彼女のベージュの傘を逆さにして壊した俺が、目覚ましの時刻を変えるまで
軽い一言で済むと思っていた俺は、彼女の剣幕に初めて事の大きさを知りました。傘より先に、変えたものがあります。

軽い一言で済むと思っていた俺は、彼女の剣幕に初めて事の大きさを知りました。傘より先に、変えたものがあります。
俺はその朝も寝坊しました。同棲している彼女はまだ支度の途中で、傘立ての一番手前にあったのが、彼女のベージュの傘でした。自分の黒い傘は奥に押し込まれていて、引き抜く数秒も惜しかったのです。駅まで走る途中で強い風にあおられ、傘は骨ごと裏返って、2本の骨が折れました。
玄関を開けると、彼女は先に帰って夕食の支度をしていました。「雨やばいね」。俺は骨の折れたベージュの傘を掲げて笑いました。大ごとだとは思っていなかったのです。「なんで自分の傘で行かなかったの」。振り向いた彼女の声の低さに気づかないまま、俺は靴を脱ぎながら返しました。「傘ごときで、そんな怒る?」