
汚れた足で走り回る息子、「わんぱくだね」と笑うだけの友人に、私は雑巾を差し出した
前日に水拭きしたばかりの廊下に、砂まじりの小さな足あとが、玄関からリビングまで続いていました。「拭くの、代わってくれる?」。絞った雑巾を受け取った友人は、そのまま廊下に膝をつきました。数日後、2人はもう一度うちに来ます。
素足のままの廊下
夏の休みに、学生時代からの友人が息子を連れて遊びに来ました。公園でサンダルのまま水遊びをしていたその子は、玄関でサンダルを脱ぐなり、泥のついた素足のまま家に駆け込んできました。足の裏からは、乾きかけた泥がかけらになって落ちていきます。足あとは廊下を越えて、リビングのラグの上まで続いていました。友人はソファに座ったまま、出したばかりの麦茶に口をつけています。私は我慢できずに台所へ雑巾を取りに向かいました。
「わんぱくだね」
廊下に膝をつき、足あとを1つずつ拭いていきました。背中の方から、友人の笑い声が聞こえます。「わんぱくだね」。それだけでした。彼女の息子は「みてみて、はやいでしょ」と、拭いたばかりの床をまた駆け抜け、勢いのままソファに飛び乗りました。白いクッションに、泥の足あとが重なります。友人はクッションを裏返して、「うちの床なんて毎日こんなだよ」と笑いました。汚れを隠しただけで、息子を止める言葉はありません。私は雑巾を握りしめたまま立ち上がりました。