
「姉ちゃんみたいになれる気がして」姉の物を勝手に借りていた私が言えなかったこと
返しさえすればいい。
姉のようにはなれないと、ずっと思っていた
年の離れた姉は、私にとって少し遠い人でした。仕事の段取りも持ち物の選び方も迷いがなくて、その隣に立つと、自分の輪郭がぼやける気がしていました。大事な予定がある日は、姉の物を借りるようになりました。イヤリングやバッグを身につけると、いつもより前を向ける気がしたのです。そのコートも、初めて自分の担当を任される日のためでした。
借りていたコートが、姉に見つかった
その日も、私は姉に無断でコートを借りていました。帰ると姉が待っていて、「それ、私のコートだよね。勝手に着ないでほしいんだけど」と言いました。とっさに「ごめん。ちゃんと返すつもりだったから」と返しましたが、姉が求めているのはそこではないと、口にしてから気づきます。「返せばいいって話じゃないの」その通りでした。返しさえすればいいと、どこかで軽く考えていた自分がいたのです。