
彼女のバッグだけ預けた俺が、リュックの中身を渡せなかった理由
リュックの底には、買ったばかりの軽いショルダーバッグが入っていました。彼女の肩に食い込むトートバッグの代わりにと、選んだものです。リュックを背負い直すたびに、彼女の視線が刺さります。どこかで切り出すつもりでしたが、いざとなると勇気が出ませんでした。
紐の跡が残った、彼女の肩
数日前、彼女が「この紐、肩に食い込んで痛いんだよね」とこぼしていました。重いトートバッグをいつも片方の肩にかけ、坂道では何度も肩にかけ直す姿を見ていました。肩への負担を減らしてあげたくて、軽いショルダーバッグを探しました。サプライズにしたかったので、買ったことは伝えずにいました。
軽くしてあげたかった、それだけ
コインロッカーの前で「荷物、ここに預けていこう」と、彼女のトートバッグだけを入れました。新しいバッグを渡すまでに、肩に負担をかけさせたくなかったからです。
「私のだけ?」と聞かれて、理由を言えばサプライズにならない気がして、「うん、そのほうがいいから」とだけ返しました。歩き出してから、俺は彼女の表情がかたいことに気づきました。