
運が味方してくれると、この恋はちょっとうまくいく気がする
彼は私のことをどう思っているだろう?
冬になって気になり始めた男の子と、夜の海で缶ビールを飲んで、二人して砂浜に寝っ転がって星空を見上げた。まだまだずっと、彼と一緒にいたかった。
だって、波打ち際では青白く光る夜光虫がキラキラと波間に輝いて、それがたとえ、実際はただのプランクトンだとしても! 昼間は「赤潮」なんかの原因生物だったとしても!? とにかくもうロマンチックだったし、とにかくもう彼が好きだ、と思った。
「次にもしもタクシーが通ったら、どこか飲みに行かない?」
帰り際、しんと静まり返った夜の国道沿いで私は賭けに出た。
「いいよ」
彼はきっと、来ないと思ったのだろう。こんな時間のこんな場所にタクシーなんて。少し戸惑って、そう答えた。
私だって、これっぽっちも来る気がしなかった。タクシーじゃなくても、見渡す限り車一台走っていないのだから。
自販機でホットコーヒーを買ったりして時間を稼いで、すると、ずっと向こうから一台の車が走ってくる小さな明かりが見えた。「あ!」と彼と一緒に息を呑み、だんだんと近づいてくるその車を、缶コーヒーを握りしめながら祈るように見つめた。
「……わぁ! やったぁ! ほら!!!」
真っ暗な夜の世界に光る夜光虫のように、それは屋根にランプを灯した空車のタクシーだった。
声を上げる私に彼は観念したように笑った。
タクシーに乗り込んで、駅前のバーに入り、「最近好きなんだ」と彼が頼んだウィスキーを少し味見させてもらって、苦っ! と思ったけど、甘いあたたかい冬の夜だった。(大島智衣/脚本家、エッセイ・コラムニスト)