
発見! 好みが「完全に一致」の運命の人
「”この人だ” って思った」
運命の人に出会って結ばれた幸運な人達は、そんな喜びのセリフをたいそう幸せそうに口にして報告してくれる。
だけど、”この人だ”って思っても、そのセリフを口に出せないまま恋が終わってしまう切なーい人達は、幸せに結ばれた人達の見えない背後にその何十倍もいるのだと思う。
私もそのうちの一人だ。
私だって言いたい。「”この人だ”って思ったんだ♪」と頬を赤らめながら報告して回りたい! それなのに……。
*
ある時、密かに想いを寄せていた男性に、「食べものはどんなのが好き?」と聞いたら、こう返ってきた。
「うーん……ひき肉?」
ひっ、ひき肉!?
そう聞いてとっさに鼻の穴を膨らませ、前のめりになった私。
なんでかって、私も“自称・好きな食べものはひき肉”女子だったからだ。
「私もひき肉が大好きっ(あなたのこともね)!!!」
もう完全に”この人だ”と思った。運命の人だと。
だって、豚肉でも牛肉でも鶏肉でもなく、ハンバーグでも肉団子でもボロネーゼでもなく、「ひき肉が好き」と言うところに、真のひき肉好きの強いこだわりがあることを、ひき肉女子の私は知っているから。むふふふふ。
*
この人こそ運命! この恋こそ宿命! 彼に出会うために私は生まれてきた!
そう確信できるポイントを見つけられると、じぶんの中で気持ちが後押しされて“ホンモノの恋”になる気がする。
そして、恋愛への一歩を踏み出す勇気にさえなる。
だからいつだって、男性の言動一つひとつに”この人だ”と思えるポイントを見逃すまいとしてきた。
そして、そのポイントは何だっていい。自分で「これだ!」と飛びつけるものであれば何でも。それが、たまたま「ひき肉」だったりもするのだ。
勘違い? 断ち切った想い
だけど、彼はまったくもって私に振り向いてはくれなかった。
なぜ……?
こんなにも私たち、”ひき肉推し”でつながっているのに! つなぎのパン粉でガッチリと!!!
そう溢れる想いである日、彼に電話を掛けた。
「ひき肉さん(仮名)っ、私ひき肉さんのことが好きです!」
すると彼は、「そっか。ありがとう」と言うだけ。いたたまれなくなった私は「はいっ。それだけ言いたくて。じゃ!」と挙動不審に電話を切ってしまった。
*
がしかし、よせばいいのに「このままでは終われない!」と再び電話を鳴らし、状況を整理しながら今度はゆっくりと彼に質問した。
私「あのぅ。ひき肉さんは、好きな人から好きって言われたら、付き合いたいと思いますか?」
ひ「思……うね」
私「じゃぁ私とは、付き合いたいとは思わない、ってことですかね?」
ひ「そう……だね」
私「ん。わかりました! (ガチャッ)」
……何これ?
自らフラれる方向へ誘導尋問したりして何なの私? 私ってば恋の鬼取り調べ官!?
終わった……。今回の恋もまた、「”この人だ” って思った」と誰にも言えずに終わった(涙)。
運命の人だと確信した相手が、私を運命の人だとはこれっぽっちも思ってくれていなかったショックよ……。よよよ。
そうして、マジメか!というほど圧倒的に、かつ手短かに事態を収束させ、ひき肉さんへの想いを自らこっぱみじんにしてしまったのだった。
ひき肉だ・け・に。うあーーーん!
運命の人を見つける魔法の呪文♪
もう一体どこにいるの!? 私が好きな、私を好きな人ー!!
どうやって見つけたらいいのか……その術すら分からない。
そういえば! 以前、スマホが見つからなくて途方に暮れていたら、ある人から、
「ニンニク、ニンニク……って言いながら探すといいよ」
と教えてもらったことがある。
「そういう時は魔女がいたずらして隠してるから、魔女が嫌いなニンニクを唱えると返してくれるらしいんだ」
まさかそんなと思いつつ、
「ニンニク、ニンニ……あったー!!!」
と秒速でその探しものは見つかった。
よしっ。これからは心の中で「ニンニク、ニンニク」と念を込めて唱えるといいかもしれない。運命の人が一刻も早く見つかるように……!
(大島智衣/エッセイ・コラムニスト)